アメリカ人は、すぐ思ったことを口にする。
人が身につけているもの、服装、髪型などが、好みだったら、すぐ口に出して、
それ、すごくいいわね。
とか、
これ好きだわ。
などと、言うのも、アメリカ人らしい。
友人同士の会話のなかだけでなく、通りがかりの赤の他人にも平気で声をかける。
タイをしめてダイニングに立てば、一日に100回くらい、
そのタイいいね。(o^-')b
と、客に声をかけられる。
ネクタイ姿のウエイトレスを見たら必ずタイを褒めること、と、学校で教わったのか?
でっかいキャラクター付きの部屋着で出かけ、早々に買い物して帰ろうとグロッサリーに駆け込もうとしたとき、
後ろから、推定年齢5歳くらいのうら若き男子に声を掛けられた。
ボク、キミのそのTシャツ、好きだよ。(・∀・)
母親同伴のナンパは初体験だ。
街行く人に声をかけて、いいところを見つけて褒めましょう、という、幼稚園の宿題かもしらん。
まあ、こういうの、アメリカ人にとって挨拶程度の感覚なので、それほどの意味を持つものではない。
当然、店員のリップサービスとしても使われることもあるし、ワレワレも、客とのコミュニケーションツールとして、重宝している。
ぶすっくれた客に口を開かせるには最適だし、なるべく機嫌よくお帰りいただくには、何かこういったコミュニケーションで印象をよくするのが得策である。
そんなワケで、注意深く客を観察するのだが、やはり、幼い頃から、この手のコミュニケーションに慣れている敵には勝てず、相手の方から声をかけられることの方が断然多い。
ペンを片手に、女性三人組のテーブルのオーダーを取る。
すべての注文を聞いて、もう一度確認。そして、テーブルを去ろうとしたところ、中の一人の客に声をかけられた。
そのペン、ステキね。(*^ー^)ノ
え、これですか???(;^_^A
愛用のオンボロボールペンである。
そうよ。ノック式なの?はじめて見たわ。(^-^)/
あっけにとられる私の前で、彼女は満面も笑み。
私はその場で数秒固まった後、我に帰ってサンキューといった。
ステキ ノック式 はじめて見た
彼女の言葉を頭のなかで繰り返して、自分なりに解釈してみた。
彼女は、ボールペンといえば、1ダース2ドル程度で売っているキャップのついた黒いやつ、というイメージしかない、彼女ワールドで生きている人。
ウエイトレスはみな、キャップのついたダサいボールペンを使っているものだと思ったのに、ノック式ボールペンを使うウエイトレスがいたなんて、なんてオサレなのかしら、と驚いた。
未開の東の果てから来た移民が、ノック式のボールペンなんて文明の利器を使うところを初めて見た。あなたがここまで、人間らしい生活をできるようになって、アメリカ人として私はうれしい、と彼女は感動した。
彼女は、誰でも良いところを見つけて褒める、という前向きな人間だが、私には、ボールペン以外ほめるところがなかった。
orz
妄想ははてしなく広がって、
ときどきノックすると空中分解して部品がバラバラになってしまうためテープで固定された、愛用のアメリカ製のダサいボールペンを、指でパチパチさせた。